モスクワで1番可愛いマトリョーシカはおみやげ屋の奥に隠れていた


ロシア土産として有名なマトリョーシカ。ロシアの都市部のギフトショップに行けばいくらでも見つけることができる。なんなら、店内に入らずとも何十体ものマトリョーシカが店の窓から外を眺めている。

私がロシアを初めて訪れたのは2019年3月のこと。トルコへの経由地としてモスクワに立ち寄った。魅力的だったのは赤の広場と聖ワシリイ大聖堂くらいで、全体としてはあまりパッとしない都市だった。

今回の私のミッションはそう、「可愛いマトリョーシカを探し」だ。

モスクワでは街中でも博物館でもマトリョーシカ推しがとても強かった。ただ、それらが「洗練された一品であるか」と聞かれると答えは”NO”だった。

マトリョーシカのデザインにはいくつか系統がある。

ひとつ目は「ハデテカ」タイプ(私が勝手に呼んでいる)。全体が彩度の高いカラーで装飾され、表面がニスでコーティングされた光沢のあるタイプだ。

派手でテカりのあるタイプ / Image: 楽天市場


伝統的なものや職人が製作しているものももちろんあるだろうが、お土産屋に置かれた1000円程度のハデテカタイプはいわば量産型だろう。機械の印刷か何かで作られているみたいで個性は全くないし、そのほとんどが中国産だと推測する。

私はマトリョーシカが欲しいのではない。「ここでしか手に入らないマトリョーシカ」が欲しいのだ。「ハデデカ」タイプのデザインは無視した。

ふたつ目は「ユルデザ」タイプ(こちらも私が勝手に命名した)。優しいタッチのイラストが描かれており、他のマトリョーシカと違って個性があった。

サンタクロースのマトリョーシカ / Image: Amazon


ユルデザタイプはキャラクターや実在する人物を模したものが多い。お土産としての面白みはあるが、別の店にも同じものが展示されていて希少性に欠けた。「貴重であること」が決して重要な訳ではないが、私としては「唯一無二」のものを探したかった。

話を少しモスクワに戻すと、モスクワはロシアの首都であるにも関わらず、街自体はとても閑散としていた。道はだだっ広いし、ひとつひとつのお店もとても大きかった。

みやげ屋も例外ではなく、どのお店も広々していた。大抵の店は真ん中あたりに数段の段差があり、上った先には別テイストのお土産を置いていた。

そう、私の求めていたマトリョーシカはそこにあったのだ。


似たり寄ったりのマトリョーシカにうんざりしかけていた時、店員に「奥にもマトリョーシカないのか」と訪ねた。店員は私を奥へ案内してくれた。

案内された店の奥で、とっても素敵なマトリョーシカを見つけた


私がマトリョーシカを選ぶ基準は2つあった。ひとつはデザイン、もう一つは入れ子の数だ。入れ子とはマトリョーシカの醍醐味である「中に一回り小さいマトリョーシカが入っている」状態のことを言う。

私が見たマトリョーシカの大半は入れ子の数が3~5体であったのに対して、このマトリョーシカには9体もの入れ子が入っている。
並べれば10体のマトリョーシカがずらりと並ぶというわけだ。

一番小さな10番目の入れ子はこんなにも小さいのだ。


木の表面を残しつつ手書きのイラストが描かれたそのデザインは、色合いもマットで柔らい印象をもち、ところどころに散りばめられた光沢のある装飾がシンプルさの中にも華やかさを演出している。


値段は6,950RUB (約1万円) だったものを値切って3,000RUB (約4,500円)で購入した。それでもなお、量産型のものが500円程度であることを考慮すれば、相当お高めなマトリョーシカであることは明らかだろう。

モスクワ市内から空港へ向かう途中の列車の中で私は、このモスクワで1番かわいいマトリョーシカを10体並べては友人に自慢していた。雑貨に全く興味のない友人にとっては「またか」と思っていたに違いない。

そんなこんなで私はお気に入りのマトリョーシカを見つけるに至ったのである。次はドイツで最も素敵なくるみ割り人形を探す旅にでも出ようか。

参考:カラフルアニュータ 10個組(赤頭巾ケシの花)【マトリョーシカ】
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